自動車部品などは加工精度を1/100や1/1000mm単位で求められる世界です。またメーカーからの要望で試作品を製造することもあります。その様な技術力がステッキ作りにも活かされています。
手元と支柱とを繋ぐ部品にも工夫があります。棒に茶碗型の溝を付けることで手元も支柱も抜けにくくするという配慮が施されています。これを見たときは思わず「すごいな!」と声に出してしまいました。曲がりのステッキに比べて継ぎがあるT字は接合部分の強度が重要ですが、これらの技術と工夫で担保されているんですね。
またWalking Stickと違いT字ステッキは曲げの行程こそありませんが、天然素材故の難しさはあります。木材の反りに考慮して、角材を支柱の丸い形に製材した後、すぐには加工せずにしばらく乾燥させてからステッキ材として使用されています。
この様に細かな配慮の上にモノづくりが行われているということを改めて実感出来ましたし、今回僕がすごくワクワクしたのは、目の前で素材が次々に形になっていったことです。師匠は頭で思い描いたステッキを形にするために、木を削るための道具や治具(部品を固定する補助具)など、パーツ毎にそのステッキ作りに最適化したものを自ら作り出します。まさに技術で無いものをあるものに変えていくことが出来るのです。
「自分で欲しいものを形に出来たら面白いだろうな」という想いと、こんなのあればなっていう想いがある人のアイデアを形にしていくサービスが作れないかなと、職人に成りたい自分と起業家としての自分がぶつかりました(笑)。
最後に今回師匠が弟子入りを認めて頂いた理由は、作り手の気持ちをよく分かった上で商売して欲しいとの想いからでした。「無茶振りして来るなよ!(笑)」という牽制の意味もあったのかと思いますが、簡単に出来るものではないし(本当に簡単そうにこなしてしまうのですが、自分でやって見るとその技のすごさを実感します。)、製作工程を良く分かった上でお客様に提案して欲しいということなのだと受け止めました。
世の中で本当に必要とされるモノを形に変えていく。そんなことが出来る様に成りたい。そう強く感じた修行でした、本当にありがとうございました!
最後になって余談ですが、修行初日の夜は師匠行きつけのお店にお招き頂きました。その際に偶然にも私が前職時代に担当していたお客様(会社)とも取引されていたということがわかり、盛り上がりました。私も金属加工業と近いところにいたので、話が弾みました。良かった(笑)。