中壽賀宣行(なかすがのぶゆき)先生
オステオパシーなどの医学や、それまでの理学療法士としての経験や身体に関する様々な知識を独自の視点で繋ぎ合せ「ホロソフィー」を提唱。施術だけでなくセミナー活動など全国的に活動している。
<保有資格など>
理学療法士(国家資格)
日本ホロソフィー協会 会長
国際ボイタ協会公認セラピスト
サプリメント管理士 etc.
まず、身体というものが一つの繋がりを持ったもので、全ての組織、器官が協力し合い、補い合い機能してくれていることです。調和して動いていると言えます。
また、身体は只の物質ではなく、そこに心や魂が存在していて、互いに影響を与え合っていることも重要なポイントです。
そうした観点から、「なぜ日本人は腰や背中が曲がり易いのか」教えてください。
大きく分けると2つのポイントがあります。(1)民族性、(2)生活文化とそれに対応した身体の構造です。
まず、前者について説明していきます。
元来、日本人は農耕民族、欧米人は狩猟民族であるという違いがあります。水路や道具、様々なモノを村などの単位で共有する日本人は自然と”和”、他者を尊重して生活してきました。逆に欧米人は自ら食料を手に入れるため、”個”を磨き、主張することが重要です。少し言い換えると、謙虚さと自信、どちらが強められてきたかということです。
こうした感情、アティテュードの違いは、姿勢にも影響を与えます。
人間の大切なモノ、守るべき部位は胸骨を中心に集まってきています。心臓など臓器が分かりやすいですね。こうした物理的な要因から人は不安を感じている時、これらを「守らなければ・・・」と隠す体勢を取ります。すなわち背中を丸めるということです。逆に自信がある場合はそんなことをする必要はないですし、胸を突きだす様にして威厳を保ちます。
この様な理由から、日本人は(欧米人と比較して)背中を丸めやすいと言えます。
また、農作業は腰をかがめて行うものですから、その影響も勿論大きいです。現代の日本でも年齢が上がるほど、地方に行くほど農業従事者が多い(多かった)ですから、腰が曲がっている方をよく見かけるのではないでしょうか。
はい、生活文化で注目すべきは”座り方”と”食事”です。
まず座り方についてお話しますと、腰が曲がりやすい座り方というものがあります。ソファなどに座っている時に骨盤を傾けて座ってしまう仙骨座りと呼ばれるものです。
本来は椅子などに深く腰掛けて背筋を伸ばした状態で座骨に体重を掛けるのが正しい座り方です。一方で筋力低下などによってこの姿勢、バランス保持が難しいためにお尻を前にずらして楽にしようとします。これが仙骨座りと呼ばれるものですが、これを続けると骨盤が傾き、合わせて背中を丸めて行ってしまいます。
ソファに腰掛ける現代の生活習慣や、日常での運動量が昔に比べて減っているため、腹筋が鍛えられていないことからも仙骨座りになりやすい理由です。
腰痛の原因にもなりますので、注意してください。
そうですね、でも腰を曲げる要因はそれだけではないというのが後者の食生活の話です。
戦後、日本人の食生活は大きく変わりました。それによって臓器、今回の話に最も関連があるのは、腸の負担も増加しています。
一見、臓器と姿勢は関係ない様に思えますが、ここで思い出して頂きたいのが「身体は繋がっている」ということです。そして、腸は腹膜に包まれています。ポイントはこの腹膜が背骨と繋がっているということです。
食事によって疲れた腸・それを包む腹膜は、硬くなり動きづらくなっていきます。アルコールの過剰摂取による肝硬変と同様に考えていただければ理解しやすいかと思います。そうすると腹膜と繋がっている部分の背骨も動きづらくなってしまいますよね。さらにそうした状況をカバーするために動く部分でバランスを取ろうとして、背骨は本来のカーブを変えざるをえなくなってしまうわけです。
そうですね、適度な運動に加えて、食事への関心も持って頂くことが、長く美しい姿勢を保つためには大切かと思います。
(今回のテーマに沿ったお話は以上です。)
実際はより詳細までご教示頂きましたが、編集ボリュームの関係から残念ながら省略させて頂きました。とても興味深い話ありがとうございました。