そうした中で、自分のブランド・プロダクトを立ち上げる、いわゆる"D2C(Direct to Consumer)"がとても注目されている。
・企画、製造から販売まで一貫して手がける。販売店などを極力挟まずお客様と直接コミュニケーションを行う事。または、それを行うブランド。
・従来の製品では少なくない額が流通コストとして費やされて来たが、そうした中間コストを無くす/減らすことができる。
・実店舗や接客の方が行っている”価値を伝える責任”もブランド側の仕事になる。
・豊富なコンテンツを用いたウェブマーケティングを軸に活動するブランドが多い。
「最近SNSとかでよく見る、新しいブランドとか商品」と、少し抽象的な言い方だとは思うが、認知されているのではないか。そこまで知られているという実感もデータも全くないのだが、目指しているところはGAARUも同じだ。
非常に手前味噌な発言でここに書く事を躊躇ってしまうが、こうした考え方に気付いたのはとても早かったのではないかと思う。多分そんな整理して説明はできなかっただろうけど。
前職時代(もう7、8年前くらい)に「農業・農家」について調べる機会があり、中でも尖った農家さんにお話を伺うとオンライン販売に注目されていた。旬や鮮度が問われる商品を、いかに感動を持ってお客様に届けるかという事を真剣に考えていて、またその取り組みは発送する農家さんだけでなく、自治体や大学など品種を作る段階から検討されているという事を知って、とても驚いた事を覚えている。また、自分で試行錯誤してどんどんアイデアを試していくその姿勢にも憧れたのだと思う。(背景としては、TPPに農作物が追加されるか否かなどが議論されていて、国産の野菜を如何に付加価値化していくかなどが注目されていた時期だったと思う。)
同時に主業務として、伝統あるブランドと製品を担当し、他国のメンバーを含め大勢がそれをいかに守りさらに発展させていくかという事を仕事にしている中で、ブランドの力・素晴らしさも実感していた。一方で、正直に言うと、これを窮屈だと思っていた事もある。
だから、そうしたブランドを、自分で1から作ってみたい。0から作ってみたい。1なのか、0なのか。どっちでもいいけれど。そういう想いは当時から変わっていない。
スタートした当時、プログラミングはほとんど出来なかった。「それくらい勉強してから飛び出せよ!」いまの自分から説教してやりたいが、やりたい気持ちが先走るとそういう基本的な事も見えなくなるんだな、と思う。
現在ほど選択肢が充実している訳ではないが、ドラッグ&ドロップなどノーコード(コードを書かず)でホームページを立ち上げれるサービスはいくつかあった。Jimdo とか Wix とか Weebly とか。このホームページもそうした CMS を使っている。サブスクリプション形式で定期的にコストが発生するが、一定のクォリティのものを短期間に立ち上げれると言うメリットは大きい。また開発を全て外でやってもらうと、改修・更新の度にコストと時間が掛かる。自分で手を動かして都度修正できるため、性格的にこちらが良いと考えたのだと思う。
ホームページがオープンした時の感動、「これから始まるぞ!」と言う高揚感は忘れられないし、徹夜していたのにずっとテンション高かったなと言う事も思い出した。理由はわからない、と言うか無かったけれども、上手く行くような気しかしなかった。
しかし、そうは問屋が卸してくれなかった。Google の検索結果(Yahoo! JapanもGoogleの検索機能をベースにしているので、ほとんどの方はGoogleの力でウェブを活用できていると言って良いのでは)になかなか上がってこない。本当に「長い時間」だった。アクセスが皆無。頑張って Facebook などでシェアして何とかアクセスを稼ごうとする。それはそれで少しは有効だったのだろうが、身内に近況報告しているだけで本質的に需要を喚起しているとは言えない。そんな事を考えると焦りも増してくる。
結論から言うと、「実績・資産」とそれから生まれる「信用・信頼」を過小評価していた。webの世界でもこうした価値は、実社会と同じ様に重要である。と言う学び。もっと早いタイミングで立ち上がるだろう、と言う甘い予測を反省している。
ここで言う「実績・資産」と言うのは、多くの人に見られ、それもリピートされたり長い時間を掛けて読み込まれていたり、時には引用やリンクを用いて参照されている評価が高いコンテンツのこと。「信用・信頼」とは、先と重なるところも多いが、時を経ても同じ様に重宝され、またそのコンテンツの数を積み重ねているサイトのこと。と説明したい。
ひとつひとつのコンテンツのタイトルや説明、構成などの考え方をSEOのノウハウとして学んできたつもりだったが、ポッと出てきた、新参者サイトのコンテンツがいきなり評価されると言うことはなかなかないと言うこと、具体的に、立ち上がるにはこれくらいの期間と努力がいるという想定までしておくべきだったと思う。
ある程度続けてきた事もあり、GAARUとしてそちらに方向転換すると言うのは今の所考えていないが、もし始めからやるとすればBASEなどのECサイトを中心にコンテンツを積み上げていくと言うのが良いのかもしれない。
フルカスタマイズのショッピング機能付きWebサイトを構築できるのであれば良いが、外注なども検討しなければいけない事もあるだろうし、やはり運用コストが掛かってしまう。
ブログ機能やサブスクリプション決済アプリ、SNS連携などECサイト機能の充実に留まらず、リアルイベントへの出店、さらにはサプライヤーとの仲介などもサービスに組み込まれてきている。魅力的なコンテンツを継続して作りやすい、またそれらを集約しやすいという観点でも優位性が高まってきていると思う。
大した物量もないのにSCMとか大層なワードを使わないで欲しいと言われそうだが、「最適なタイミングに、求められるモノを、しっかりと届ける」と言う原理原則は大手メーカーであろうと一人の作り手であっても、変わらない。
何とか検索結果にも表示される様になり、少しずつ問い合わせと販売が始まると、在庫をどれくらい持つべきか、製造・発注のタイミングはいつすれば良いのかと新たな悩みに直面する。提供するプロダクトのサイズや納期にもよるが、在庫を持てば販売機会を逃さずに済むけれどもその分保管スペースも増大していく。もし、そのために倉庫や部屋を借りればコストはアップするし、その場所がアクセスしやすいかどうか等も考えなければいけない。そうでなければ時間という資産も消費してしまうことになる。
また外注している場合は製造から納品までに時間が掛かることも検討しなければいけないし、食品など消費期限があるものはその管理も必要になってくる。
とても基本的なことに思えるが、実際に直面するまで実際に起こりうる事としてイメージできていなかった、本当に最後まで考え抜いて想定できていたのか、と反省している。
また、一番大切だと思っているのが品質管理である。どのD2Cブランドも、ブランドマネージャーも「自分のプロダクトで課題を解決し、喜びを提供すること」が事業スタートの動機にあると思う。期待に応える製品を届けなくてはいけない。
GAARUの場合、製造・入荷のタイミングと出荷前に必ず製品ひとつずつ状態を確認しており、梱包・発送も自分で行っている。もちろん手洗いや作業場所の清掃などは適時行い、品質に影響がない様に細心の注意を払う様にしている。神経質な性格もあるが、これは今後も必ず継続しなければいけないと思う。
D2Cの場合、本当に製品がお客様の手元に届けられるまでが責任範囲であり言い訳はできない。しかし、全ての製品を全てのお客様に直接お届けすることはほぼ不可能だ。だから配達を外部に委託することになるのだが、お客様にとってはこれもブランド体験であると言うことを絶対に忘れてはいけない。
そういった理由から、配達業者とサービスの選定は十分に時間を掛けた方が良いと考えている。コストを第一に選んでしまいそうだが、配達物の分類が細かくされている、地方まで配達網が行き渡っており配達日数も比較的短く保証されやすいのかなども検討する方が良い。
また、配達状況が追跡できることはとても重要だと思う。昨今、とても残念なことではあるが、自然災害などが増え物流が滞るケースを何度か経験した。この際に状況を把握し、お客様に情報共有できるかどうか、と言うのも顧客体験に関わってくる。
長々と書いてしまったが、これでも全然足りないくらい多くの躓きを経験してきている。本論から脱線しすぎるので割愛。述べさせて頂いた事項に絞って自分なりの対応策をここでは説明する。
結論は、タイトルにある”群”展開。単純に製品数を多くしよう、と言うことではない。共有部分、公約数を多く持つ様に、まとまりを意識して組み立てると言うことだ。ステッキとシザーケースという組み合わせは、お世辞にも賢明な選択ではない、と今は言える。
製品カテゴリーも違うし、勿論ターゲットも違う。製品の大きさも違う。SNSで投稿をしてもどちらかのお客様には全く興味のないコンテンツを発信してしまう可能性は高い。また、製品サイズが大きく異なることで梱包や発送の方法も異なってくる。オペレーションが複雑になる。製品が離れていればいるほど、トライアンドエラーを次に活かせないということが多くなってしまう。
製品ごとに共通・共有するものが多くある場合、相乗効果も大きくなる。例えば、シザーケースをいくつも販売する通販サイト・メーカーがあると、検索では上位表示されやすい。それはいくつか選択肢があると、見に来たお客様は自然とサイト滞在時間も長くなり、結果としてそのページは有用であると検索エンジンに判断してもらえることが大きな理由の一つだと考えている。GAARUの様に1商品/1カテゴリーの場合、価値を認めて深く理解しようとして下さるお客様と初見で関係ないと帰ってしまうお客様の二極化が起こってしまう。ただ数を多くすれば良いというわけではなく、ニーズを起点にした共有部分を意識しなければならない。これを群という言葉で表現した。
「こうすべきだ」という真面目な話ばかり書いてきたが、本心は「そういう試行錯誤こそ、一番面白い」ということも忘れずにお伝えしたい。だから、これを正解だとか不正解だとか決めて行動するのではなく、その時、その場所での最適を見つけて行動することが大切だと思う。小さく細かく早く、試行する。
上記だけだと、無計画に飛び出して大変!みたいな印象だけ残ってしまうかもしれないが、やって見たからこそ得た可能性や成長も、自分的には感じる。写真やプログラミング、数学等にこうして興味を持つ様になるとは考えてもいなかった。(改善点も現在進行でまだまだ山積中である。)余談になってしまうが、学びは問題解決に必ず役に立つ。
何かを深く掘り下げ、価値を追求するというD2Cの活動はきっと社会に貢献できる。多くの新しいブランドが立ち上がり、その一翼を担える存在になれる様研鑽していきたいと思う。