アイネット 齊藤様(以下、敬称略):嬉しかったですよ!
松本:それまた何ででしょうか?お知り合いのご紹介とはいえ、いきなりではなかったですか(笑)
齊藤:やりたいことが非常にわかりやすかったです。利用者の皆様の前でスピーチされた時に「今は存在しないステッキを作りたい」と言っていたと思うんだけど、その想いに共感しましたね。
松本:その理由についてもお伺いできますでしょうか?
齊藤:「体が不自由になってから仕方なく持つ杖ではなく、必要となる前から、それこそファッションとして持つステッキ」という話もあったけど、これは私たちが大切にしている”予防”の考え方に通じる部分があると思いました。
認知症などの病気でよく言われることですが、介護においても、少しでも早くから対策や予防法を実践しておくことが大切です。より長く健康でいてもらうことが何よりも嬉しいことですからね。
それに、これは日々の活動の中で実感していることだけど、お洒落な方ほど杖を敬遠されていますよ。いざ必要な段階になっても、これは杖だけの話ではないけれど、「みんなと同じものを持ちたくない」とおっしゃいます。だからお二人の今はないお洒落なステッキを作るという提案は、決してやぶさかではないと思いました。
松本:具体的にはどういうことでしょうか?
齊藤:人それぞれ「良い!」というものが全然違うんです。安全面などを考えると、一定の基準を満たした同一のものを皆さんに提供するのが普通だと思うのですが、ここではそのことよりも、一人一人の自主性を尊重する様に心がけています。皆さん楽しく、こだわってスリッパを選ばれますね。その代わりと言っては何ですが、スタッフがしっかりと皆様の動き、足元に注意を払う様にはしていますのでご安心ください。
齊藤:そうでしょ?(笑)
これは介護やミニサロンのことというよりも、経営者としての考え方の話かもしれませんが、とにかくスタッフが働き易い場所を作ることが大切だと思っています。2012年に法人を設立してから色々大変なこともあり、時には「なんでこんなこともできないの!?」とスタッフに対して思ってしまう瞬間もありましたよ。でも、利用者の皆様のこと、より楽しいアイネットにしたいと思った時、我々スタッフにこそ自主性が必要だという考えに至りました。だからこそ、適材適所、長所を伸ばす・活かして働いて頂くことを大切に思っています。
齊藤:例えば、アイネットでは絵を描いたり、造形をしたり、色々な活動をしていますが、これらのアイデア出しから講師まですべて私たちスタッフが行っています。そのために色々勉強をしたり、時には資格を取得したり。大変なことだけど、利用者の皆さんが楽しんでくださるので、やりがいを持って取り組んでいます。
松本:手作りの活動ですね、素晴らしい。皆さん、さぞかし喜ばれているでしょうね。
齊藤:そうだと良いですね。でも、毎回うまくいくわけではありませんよ。実際やろうと声を掛けてみると「私はそんなのしたくない」とか言われたりもします。シニアの方のほうがそこら辺ははっきりされているかもしれませんね。大体16人の利用者の方がいらっしゃいますが、半分の8名ほどに喜んでもらえればひとまず合格ではないでしょうか。
松本:それは大変そうですね・・・そういえばステッキのヒアリングの時も、それぞれのこだわりがすごいなぁと感じていました。本音を聞き出すのもなかなか難しそうだぞと。スタッフの皆様のサポートがあったので、何とか形になりましたが(笑)
齊藤:そうなんですよ、だから先ほどのスリッパの話にもつながるのだけれども、やっぱり個人を尊重することが大事なんだと思います。
自分で出来たという自信が、他人に対する優しさや気遣いにつながります。アイネットでは利用者の方々も、スタッフも、共に教え合い、認め合う関係性が出来てきたのではないかと思います。だから、仰るような雰囲気、”笑顔”と”ありがとう”に溢れた空間になっているのではないかな、と。
齊藤:そうですよ。時間は掛かっても、努力は必ず実を結びます。あなた達ならやり遂げる。とにかく真摯に、地道に継続することです。応援しています。
松本:本当にありがとうございます。(インタビュー終了)
なぜ介護の道に進もうと思ったのか、法人設立当初の苦労話など、ここではお伝えしきれなかった大切なストーリーがまだまだたくさんあったことを先にお詫び致します。シニアの方々には多種多様なニーズがあり、どう取捨選択していくべきか迷うことも多かったですが、いつも的確なアドバイスを下さる齊藤さんはじめ、アイネットの皆様には本当に感謝しています。また、このつながりを作ってくださった wacca にもこの場を借りて御礼申し上げます。もちろんこの記事をお読み頂き、興味を持たれた方は遠慮なくお声掛けください。みんなで考えたステッキを持って参上致します。